人を診る力が社会を変える

Future Leaders

 
     
 
倉持 怜史

合同会社 接骨院くら

代表社員

 

仙台接骨医療専門学校卒業後、オリンピック選手も来院するトップレベルの接骨院で修行。地元・宇都宮に戻り、県内屈指の人気接骨院で多くの臨床経験を積む。2013年、「治療家としての成長を止めたくない」という想いから接骨院くらを開院。脳・神経信号・心理を診る独自の治療法で、国立大学との共同研究や大学病院からの紹介患者を受け入れるまでに至る。

治療家として生きる決断

宇都宮市に拠点を構える接骨院くらは、単なる接骨院ではない。骨や筋肉といった構造的な問題だけでなく、痛みや不調の原因を「神経信号」や「心理」の側面から捉え、改善へと導く治療院だ。この視点を持ち、実践している接骨院は全国的にも極めて少なく、症状改善やパフォーマンス向上に直結することから、患者やスポーツ選手から高い評価を得ている。

しかし倉持代表がこの道を選ぶまでには、大きな葛藤があった。2008年、故郷・宇都宮に戻った倉持代表は、当時栃木県で最も患者数が多いと言われる人気接骨院に入社した。非常に多くの臨床経験を積むことができる環境。治療家として理想的な場所に思えた。

「院内は常に混雑していて、5人、10人と患者さんを待たせている状況が日常でした」

限られた時間の中でリハビリや施術を行う毎日。多くの患者に頼られているというやりがいを感じる反面、焦りを抱えたまま施術を行い、自分自身が納得できる治療を提供できていない現実があった。

「このままでは、治療家としての成長が止まってしまうのではないか」

その不安は日に日に大きくなっていった。高校時代、サッカーで怪我をして思うようなプレーができなかった歯痒い経験。同じような思いを他の選手にさせたくないという想いが、独立への原動力となった。「患者さんが本当に来てくれるのか、生活していけるのか」という不安はあったが、治療家として成長を止めてしまうことへの恐怖の方が、はるかに大きかったため、2013年に倉持代表は接骨院くらを開院した。

 

 

本質を探究し、結果を追求する

倉持代表の治療哲学の根底にあるのは、社会人1年目の挫折経験だ。オリンピック選手やトップアスリートが集まる接骨院で、メジャーリーグで活躍したトレーナーをはじめ、技術も情熱も高い人たちに囲まれ、毎日が真剣勝負。「何もできない自分を知ることになりました」。この経験が、今の原動力となっている。

そして倉持代表を決定的に変えたのが、2020年7月の出来事だった。バドミントン高校選抜大会で優勝した選手の治療を任され、全力で取り組んだ。しかし選手のパフォーマンスは上がらず、目標達成には至らなかった。「このままの自分では、また同じことが起こる」。以前から分かっていたこと―痛みや不調には心理が大きく関係している。このことをきっかけに、倉持代表は脳、神経信号、心理を診ていく治療を LCA(ライフコンパスアカデミー)で本格的に学び始めた。

「レントゲンやMRIに映る骨や筋肉だけでなく、神経信号や心理の側面から不調や痛みの原因を捉える。この視点を持って施術に反映している接骨院は非常に少ないんです」

初診の患者には、来院予約の時点から治療コンセプト動画を送り、治療前にも説明動画を見てもらう。「当院は他院とは違った視点、異なる治療を行っていますので驚かれることもあります。でも、この違った視点で治療を行うことで、患者さんの光が見えてくると信じています」

 

 

臨床家の枠を超えて

2022年、接骨院くらに転機が訪れる。来院していた患者の中に、宇都宮大学の研究者・松浦佑希准教授がいた。ラート競技日本代表選手でもある松浦准教授は、怪我の治療および競技パフォーマンス向上を目的として通院していた。

治療を受ける中で、松浦准教授は接骨院くらの治療方針・成果に深く感動し、「この治療をより多くの方に知ってもらい、広めていきたい」という想いから、研究論文として発表しようと提案した。松浦准教授を筆頭に、筑波大学名誉教授、ライフコンパスアカデミー代表、そして倉持代表を中心として研究が進められた。臨床家が大学研究者と共同研究を行うことは、日本全国的に見ても極めて稀だ。

2024年、「イップス症状における心身条件反射療法(PCRT)の効果に関する症例集積研究」という論文が刊行された。この研究は、倉持代表個人にとって大きな励みとなっただけでなく、PCRT の発展・普及にもつながる貴重な成果となった。

さらに驚くべきことが起こる。2025年、大学病院の消化器外科医師が、術後の患者で困っている方を接骨院くらへ紹介してきたのだ。「大学病院からの依頼書を患者さんが持ってきた時には、自分自身の目を疑いました」と倉持代表は振り返る。医師は難しい手術と向き合う名医であり、常に患者の病気、健康と向き合い、健康の本質を探求している。そんな医師が接骨院くらを認めてくれた。「当院がおこなっていること、視点、治療が間違いではないことを強く証明してくれた出来事でした」

 

未来への道標

倉持代表が描く未来は、壮大だ。「当院の理念が宇都宮、栃木県、日本へと広がっていくこと」を目標に掲げている。

「現在、西洋医学的検査、AIが急激に進歩し、お医者さんはじめ、接骨院の先生も患者さんの顔すら見ずに、画像、検査データばかりに目を向ける時代となっています。昔のお医者さんは、患者さんの顔色、目の輝き、表情、舌の状態、声のトーンなどに注意を払い、人を診ていたのではないでしょうか」

西洋医学が得意な画像検査、検体検査だけでなく、脳・神経信号・心理を診ることが大切であることを社会のスタンダードにする。特に神経信号、心理、心の信号、心の混線は病院の検査では異常を特定することは困難だが、接骨院くらが行っているPRT(生体反応検査法)を用いることで、簡便に不調の出所へ辿り着くことができる。

組織づくりにおいても、倉持代表は独自の哲学を持つ。「トップダウンの組織ではなく、ボトムアップ的な組織を目指しています。スタッフ一人ひとりが能動的に動き、責任をそれぞれが持つことで、さまざまなアイデアが生まれ、やりがい、やる気、達成感が出てきます」

トップダウン的な目標ではなく、個人の「真の価値観」に沿った目標を設定し、そこへ自ら進んでいくことで、力強いエネルギーで継続した行動ができる。スタッフの成長とともに、患者への貢献度が高まり、良い循環へと向かっていく。

健康は人の本質であり、良い思考、行動力の原点だ。その原点をサポートすることで豊かな人生へ向かい、その連鎖のネットワークで社会へ貢献し、人類の繁栄へとつながる。

「当社で人を診る力を持ったスタッフを育成し続け、結果の出せる先生が増えていくことで患者さんへ貢献し、会社の成長・発展へとつながっていく。そして当院が接骨院業界のモデルとなることで、治療に悩まれている先生方の光となり、道標となる存在であり続けたいんです」