Future Leaders
1974年、東京都生まれ。大学卒業後、東京の住宅関連企業で営業職として約12年勤務。35歳の時に父が創業した株式会社アルファテックに参画。専務を経て、現在代表取締役社長。
栃木県小山市に本社を置く株式会社アルファテックは、一般住宅のエクステリア(外構・庭回り)とリフォーム・リノベーションを手がける会社だ。「ウチもソトもヒトも豊かに」をコンセプトに、住まいの内部環境と外部環境を一体的に提案する独自のスタイルで、創業31年を迎えた。現在、小山店と宇都宮店の2拠点で10名のスタッフが活動し、これまでに手がけた施工実績は20,000件を超える。顧客のほぼ100%が一般家庭という、徹底したBtoC事業を展開している。
エクステリア工事が6〜7割、建築リフォームが3〜4割という事業構成で、業界では珍しい内外両方の同時提案を可能にする強みとなっているアルファテック。代表取締役社長の望月俊彦氏はこう語る。「住まいの価値は建物の性能や機能だけで決まるのではなく、建物の外部環境を含め、敷地を一体的に考えた空間利用によって、どんな暮らしが育まれるのかが本当の価値なんです」

アルファテックの創業は、望月代表の父の挑戦から始まった。父は大手建材メーカーの営業として全国を飛び回るサラリーマンだったが、約40年前、アメリカのDIYやリフォーム文化が日本にも定着すると着眼。50歳を過ぎてから独立を決意した。「50歳を過ぎての独立なので、周りからは『無謀だ』と止められたそうです。でも父は、『どうしても自分でやりたい』という気持ちが強かったんですね」創業当時の苦労は並大抵のものではなかった。会社が厳しい時期には、創業メンバーを守るため自身の給料をゼロにした。
「本当に家族経営でした。全国を飛び回っていて、家にいなかったから私は子供の頃、父の記憶がほとんどないんです」と望月代表は振り返る。自身は東京で生まれ育ち、小山とは縁もゆかりもなかった。大学卒業後は東京の住宅関連企業で営業職に就き、約12年間、3社を経験。飛び込み営業からルート営業、BtoBからBtoCまで、さまざまな営業スタイルを経験した。
「最初は継ぐつもりなんて全くなかった。ただ、自分がキャリアアップのためにやりたいことがあって、それを試させてくれるなら面白いかなと思って、退職して入社する事に決めました」と語る望月代表。専務として参画し、自分のアイデアを次々と実現していった。そしてこうも言う。「子供の頃、全くいなかった父と、大人になってから7年間、濃密な時間を過ごせたんです。これは本当に宝物の時間でした」父は多くを語らず、任せてくれる人だった。しかし、その背中から学んだことは計り知れない。
創業20周年の記念式典。父は取引先や業者に向けて、次のように語った。「第二創業がはじまる。旗印は変えず、新しいリーダーで新しい組織を作っていく。息子だから事業承継するわけじゃない。絶対に諦めない覚悟。そういう思いと覚悟を備えているかどうか、人物を見て承継させた」父は数年後に他界したが、その言葉は今も望月代表を支え続けている。「私は父を経営者として尊敬しているんですよ。その自分が尊敬する経営者が託した。それは間違いない。だとすると自分も乗り越えられるはずだ、と」
そして望月代表がYKK APの創業者・吉田忠雄氏のミュージアムを訪れた時のこと。細かな手帳やメモを見て、彼は父の姿を重ねた。「父もすごいメモ魔だったんです。貴重だなと思って。こういう創業者の思いをしっかり残して、次世代の人たちに伝えたい。歴史はお金じゃ買えないから」

この仕事の一番の面白さ。それは間違いなく、お客さんからの『ありがとう』だと望月代表は即答する。「誰のためにやっているか分かっている仕事で、最終的にお客さんから感謝される。もちろんお客さんの身銭からいただく仕事ですので、シビアです。でも良かったものに対しては本当に心から喜んでくれる。どんなに頑張っても、大変な思いをしても、最後の最後に『あなたに頼んでよかった』って言ってもらえる。こんな面白い仕事はないと思います」
リフォーム市場は現在、追い風が吹いている。昨年は市場規模が8兆円を超え、2000年以降で最高を記録した。これは少子高齢化と新築住宅の減少により、国の住宅政策が既存住宅のストック活用にシフトしている背景がある。そんな中、アルファテックには圧倒的な差別化ポイントを持っている。それは、エクステリアと建築リフォーム両方の同時提案ができることだ。「内外一体のトータルソリューション。これは他ではまずないですね」と望月代表は胸を張る。
一般的に、エクステリア業者は庭や外構の専門で、建築の相談には答えられない。逆に、工務店や大手リフォーム会社は、庭の植栽や外構の細かいことは分からない。この強みは、意図して作ったわけではなく、お客さんの役に立とうと思ってやっていたら、両方えきるようになっただけだと望月代表は言う。
効率だけを考えれば、得意分野に特化する選択肢もあった。「でも、地方ではそういうモデルじゃない方がいいと思うんですよね。首都圏は一点突破でもいいと思います。市場が大きいから。でも地方では、お客様のライフスタイルやライフステージの変化に伴う住環境のニーズを全て捉えられて、それを高いレベルで実現できれば、仕事に困ることはない」
そしてアルファテックのビジネスモデルには、もう一つ秘密がある。それはOB顧客の循環だ。新築から概ね5年以内に、駐車場整備やデッキ設置といった、エクステリアの需要が必ず来る。つまり、新築直後の若い家族をOB顧客として獲得でき、そして、その顧客に対してフォローを続けていくと、30年後にリフォームの需要が生まれるのだ。「創業当時、新築住宅を購入したお客様が、今30年住んでいるんです。その間にもちょっとした修繕やメンテナンスのお仕事も請け負って行くと、大きなリフォームの時期になると一番に我々を思い出していただけるんですね」

「今後のビジョンは、OB顧客を主体としたコミュニティの形成とマーケットの形成です」と望月代表は言葉を紡ぐ。新規顧客の獲得は、少子化の中でますます難しくなる。相手が分からない市場にお金をどんどん投げ込んで情報発信するより、自社の6,000軒のOBに対して有効な情報発信をして、この先OBのお客さんが直面するだろう課題に対して、我々の提供するソリューションを示していくつもりです」
「うちの会社に関わったOBのお客さんに一番喜んでもらいたいんです。そのお客さんが得することをやりたい。そうすると、OBのお客さんが新規の方を紹介してくれたりもするでしょうし。一番は、関わる人に幸せになってもらうこと。そのための努力をしていきたいです」
そしてこれからは“人”に対して価値が大きくなっていくと、望月代表は熱を込める。「若い人たちには可能性しかない。これからAIの時代になってゆくほど、『人の価値』って大きくなるんですよね。つまり『この人だからお願いしたい』という気持ちが絶対に残るわけです。自分自身を磨いて、選ばれるようになってほしい。そのためにはいろんなことを体験して、興味のあることを何でもやってみてきたという積み重ねが必要です。そういうものが自分の筋肉になって、人格の形成が行われて、簡単には真似できないものが作られていく」
創業者の父から受け継いだ覚悟と、お客様への誠実な想い。彼が描く未来は、関わる人すべてが幸せになる、温かなコミュニティの姿だった。
