栃木に根ざす、清掃プロ集団の挑戦

Future Leaders

 
     
 
今井 正仁

株式会社サニクリーン宇都宮

代表取締役社長

 

大学卒業後、一般企業へ営業職として入社。2年間のアメリカ留学生活を経て、日本へ帰国後、株式会社サニクリーン宇都宮へ入社。営業マンから所長、営業責任者を経て2011年に父から社長を継承。現在に至る。

50年以上続くクリーンな事業モデル

株式会社サニクリーン宇都宮は、「快適でHAPPY!! ~サニクリーン宇都宮は、お客様の快適ライフをトータルサポートする企業です〜」を企業理念として、オフィスやご家庭向けに清掃関連サービスを提供する会社だ。もしかすると「掃除をしてくれる会社さん」というイメージを抱くかもしれない。しかし主軸事業は、ビルエントランスにあるマットや清掃用モップ、トイレタリー商品を中心とした環境衛生商品のレンタル事業だ。汚れたり、古くなって買い替えが必要な清掃用具を常にキレイな状態の商品を定期交換で提供し続けてくれる。

「当社は今期56周年目を迎えておりますが、創業当時からレンタル事業を通して商品を使い捨てしない、環境に配慮した取り組みを継続しております。我々は先駆的なSDGsの取り組みを長年にわたり継続してきた会社だと胸を張って言うことができます。というよりむしろ、環境に配慮した商品のリサイクルシステムに時代が追いついてきたなと感じております。」そう語るのはサニクリーン宇都宮の今井代表だ。

会社と社用車

東京に本部をおき全国展開するサニクリーングループ。「当社は24あるグループのフランチャイズの1つではありますが、56年前にサニクリーン黎明期の立ち上げメンバーだった父が事業拡大のために当時は宇都宮か横須賀辺りに出店してほしいと話がもちあがり、父方の祖父が宇都宮にいた縁もありここ宇都宮で創業いたしました。」当時のサニクリーンは、アメリカで開発された乾式清掃用具(モップやマットのようなもので汚れを吸着させてホコリを取るダストコントロール商品)を日本に持ち込んで、伝統的なホウキと雑巾の清掃様式を現代にいたるモップやマットに変換させたパイオニアとして急成長を遂げていた。

その後株式会社サニクリーン宇都宮は、栃木県と茨城県全域に加え、埼玉、群馬、福島の県境までを商圏として5つの営業所を展開するまでに事業を拡大させた。毎月定期集配にお伺いする法人のお客様は12,000件を超えるという。

 

従業員の特徴=お客様とのコミュニケーション

採用の大前提としては、人と接することが好きであるか、明るく前向きであるか、このあたりを重視するという。「弊社サービスは、決して売って終わりのサービスではなく、定期的にお客様へ訪問して、お客様が快適になり、喜んでもらえるサービスでなければいけません。そのために従業員は、お客様へ自ら率先して提案することができ、お客様からありがとうと感謝されるサービスを目指しております。」つまり、人と接するのが好きで、その手段として「お掃除(環境衛生)」というサービスや商品を提供する感覚で仕事にあたる。そうすれば、掃除だけでなく、掃除に付随するいろんな課題に目を配ることができ、気遣いの質もあがる。

このサニクリーンの提案力をさらなる高みに引き上げるのが「おそうじマイスター制度」だ。入社すると、おそうじマイスターの資格を取得し、清掃のプロとしての提案スキルを修得する。「お掃除の仕方というよりは、油汚れに困ってるとか、水垢が取れない、トイレの臭いが取れないなど、様々な課題を分析して適切にアドバイスできる力を身につけます。知識はその過程で身につけるものになります。」

清掃活動の様子

 

女性活躍部署である「広報課」の設置

2014年に今井代表は女性活躍部署である「広報課」を設置した。「一体何のための部署なんだ?」という周囲の視線を横目に「女性活躍」と「地域社会貢献」を兼ねた部署として具体的には、おそうじマイスターを活用したおそうじ教室の開催などをおこなった。「今10年目になりまして、栃木県を中心におそうじ教室を通算600回を超えて開催しました。地域に根付いた活動として、少しずつ認知されてきたという感じがあります。」と驚きの数字を告白した。

子供向けおそうじ教室は全て無料で開催される。子どもたちを対象に、楽しくお掃除を学べるイベントで、歌を歌ったり、紙芝居したり、ペットボトルのキャップをゴミと見立ててゴミ箱に入れるゲームをしてみたりと試行錯誤の連続だったと語る。「お掃除を小さい子どもたちに学んでもらうことで、家庭でもお掃除を教えるのが楽になったり、小学校でも掃除の時間を楽しめるようになったりと、参加した保護者の方々からは、高評価をいただいております。」

300回を超える頃には、宇都宮市長からCSR貢献企業として表彰された。東日本ホテルで女性活躍と地域社会貢献をテーマにプレゼンをおこなうなど行政からも高く評価される事業にまで発展した。今では沢山の大手企業さんからお声掛けいただいて、コラボイベントを開催するまでになってきているという。

しかし、全ては順風満帆ではなかったと立ち上げ当初を振り返る。「人が余ってるわけじゃないので、いきなりボランティア活動をやられても素直に理解は得られないんですよね。」社内でも、あの部署は何をやってるのか?と変な目で見られた時期もあったという。しかし、お掃除教室を少しずつ100回、200回とこなすうちに、社員のお子さんから「お掃除教室うけてきたよ!」といったフィードバックが発生するように。社員は、自社サービスで、自分の子どもが喜ぶ姿を見ることになり、社内でも「すごい活動だね。」と徐々に理解が広がっていったという。

 

社会貢献の不思議

営業先に名刺を渡したとたん「あ、サニエルだ…うちの子どもが、 おそうじ教室を受けましたよ。」と和やかな会話がスタート。とんとん拍子に話は進み成約にいたるという事例もあったという。サニエルとはサニクリーンのキャラクターで、お掃除教室にも登場する。その他にも、イベントを担当する女性従業員らが知らぬ間にものすごい人脈を形成してしまうのだという。彼女らからは、大手お菓子メーカーさんや自動車メーカーさんなどの清掃案件などを取り付けてきたこともあるという。その潜在能力は今や計り知れないものになりつつある。

社会貢献活動

しかし、最も大きな恩恵は従業員が会社をより一層誇れるようになったということだと語る。「社員の皆さんが、自分の仕事に誇りを持ちながら取り組めるんじゃないかなと思います。10年やってきたら、想像を超える景色を見せてくれて挑戦させていただいたことに感謝しています。」

 

十数年に渡る宇都宮ブレックスのスポンサーが語る栃木の強み

サニクリーン宇都宮は、十数年前から現在までプロバスケットボールチーム「宇都宮ブレックス」のスポンサーを務めてきた。地域社会貢献としてプロスポーツチームを応援して、コートにモップも無料で提供するなど長年支えてきたチームが日本一を2度も達成するなど、選手たちは最高の結果で恩返しをしてくれると語った。

「よくプロスポーツでは、大企業さんがスポンサーについていることがありますが、宇都宮ブレックスは何百もの中小企業が母体となって応援してる珍しいチームで、ものすごい熱狂的なんですよね。応援するファンがたくさんいて、地域一帯となって盛り上げることができてる実感があります。こういう熱さを共有できるから、さらに仕事頑張ろうってなりますよね。」

毎年おこなわれるスポンサー同士の名刺交換会でも、栃木を盛り上げるぞという熱気に包まれるという。仲間意識の強いこの熱い想いが、実際に仕事につながったりする事例もある。スポーツを通じて、同じ志の下、みんなで支え合っていくことができる栃木の結束力は、成長する企業の源泉なのかもしれない。