イノベーションコミュニティの創造 ─ 那須塩原の不動産屋が挑む壁

Future Leaders

 
     
 
金川 正典

株式会社相互企画

代表取締役社長

 

1974年、栃木県那須塩原市生まれ。1993年に栃木県立大田原高等学校商業科を卒業し、東京会計専門学校税理士学科で学び、全経簿記能力検定(上級)を取得。その後、税理士試験の簿記論に合格するもビリヤードと出会い、1999年まで都内ビリヤード店「ルパン」にて勤務。2014年、実家の事業である株式会社相互企画に入社。2016年に代表取締役社長に就任。近年では経済産業省の事業再構築補助金を活用し、2023年にはゴルフ&ビリヤードバー「サラオンカルモ」を開業。2024年には日本プロポケットビリヤード連盟のレッスンプロ資格を取得。現在に至る。

栃木でつくる金川式未来予想図

栃木県北部、那須塩原市に本拠を構える株式会社相互企画。創業40年を超えるこの会社は、地域密着型の不動産事業を基盤に、時代のニーズに応える多角的な事業展開で知られる。手掛けるのは不動産取引、住宅建築、そして遊戯施設運営という一見異なる領域。しかし、そこには一貫して「地域と共に成長する」という揺るぎないビジョンが存在する。

この舵を取るのが、代表取締役社長の金川正典氏だ。革新的な発想と情熱を武器に、長年の不動産取引で培った経験に新たな価値を融合し、地域社会の未来を切り拓いている。「地元に根差した経営」を軸に、時代の波を巧みに乗りこなしながらあらゆる挑戦を続ける彼の姿は、多くの経営者にとっても模範となる存在だ。

「不動産業は土地と建物を提供するだけでなく、人々の生活基盤を築く仕事です。その責任を全うするためには、現状に甘んじることなく、新しい価値を創造し続ける必要があります」と語る金川代表。その言葉には過去に培った実績だけに頼らず、地域と共に進化し続ける決意が込められている。

サラオンカルモ 全景

特に注目されるのは、2023年に立ち上げたゴルフ&ビリヤードバー「サラオンカルモ」だ。金川代表が目指すのは、「地元発のイノベーション」が芽吹く場。不動産業界の伝統を重んじつつも、地域住民や訪問者が新しい体験を共有できる場を創出した金川代表の挑戦には「人々が集うことで生まれる力」を信じる強い思いがある。「ここを単なる遊戯施設にとどめるつもりはありません。地域の情報やアイデアが交錯するコミュニティの中心となる場所を目指しています。」その一言からは、単なる事業展開にとどまらない壮大な未来図が垣間見える。

代表の物語は、単なる経営者の成功談ではない。それは地域を愛し、その未来に希望を託す「挑戦のDNA」を持ったリーダーの物語だ。

 

波乱万丈の軌跡…若くして得た“宝物”とは

金川代表の人生には、挑戦と転機が織り交ざった独特の物語が広がっている。幼少期から家業の影響で商業の世界に触れた金川代表は、高校卒業後、税理士という専門職を目指して進路を選択した。しかし、その道は決して平坦ではなかった。日々の厳しい試験勉強に身を投じた結果、若さゆえの無理がたたり、体調を崩す事態に。「夢を追う」という希望に燃えていた彼にとって、これは最初の大きな壁だった。

だが、人生を大きく変えたのは、まったく予期せぬ「ビリヤード」との出会いだった。25歳を目前にして、金川代表は当時世間を騒がせた「ノストラダムスの大予言」に心を動かされ、「世界が滅ぶならば、好きなことを全力でやろう」と決意する。その言葉通り、彼はビリヤードにのめり込み、夢中でボールを追う日々を送った。対戦相手に負けるたびに悔しさをバネに腕を磨き続け、その努力の結果、ビリヤードという趣味が彼の人生に深く根付いていく。

ビリヤードレッスン

「失敗には必ず学びがある」と金川代表は語る。その信念は、若き日の挑戦と挫折の経験から得られたものだ。税理士資格の取得に苦戦したこと、会社勤めで厳しい労働環境に身を置いたこと、そして家業を引き継いだ後、旧来の慣習を改革する責任を負ったこと…。どの経験も一筋縄ではいかず、常に彼に新たな課題を突きつけた。

「挑戦にはリスクも伴いますが、そこで得られる経験は何物にも代えがたい宝物です。」
そう語る金川代表にとって、これらの試練は「失敗を恐れない姿勢」という彼の経営哲学の根幹をかたちづくる足がかりとなった。彼は失敗を「終わり」ではなく「次の成功への足掛かり」として捉える。どれだけ失敗してもまた挑戦すれば良い、というシンプルながらも力強い信念が、今日の彼を支える柱となっているのだ。

 

相互企画が目指す「現代のコーヒーハウス」

金川代表が率いる相互企画は40年を超える不動産取引の実績を持つ。その中核を担うのが栃木県北部の地元密着型の経営スタイルだ。住環境改善のための「リフレクティックス」という遮熱材の導入や、地元住民と連携した開発事業に取り組むなど、地域のニーズに応じた事業を展開している。また、新幹線駅がある利便性の高い地域という地の利を活かし、移住者にも門戸を開く取り組みを進めている。「栃木の地で暮らす人々が『ここに住んでよかった』と思える街づくりを目指したい」と金川代表は語る。

「産業革命期のイギリスで、コーヒーハウスが資本家や科学者の議論の場となり、イノベーションを生んだように、私たちの施設もそのような役割を果たしたい。」サラオンカルモを単なる遊戯施設にとどめず、新しいビジネスやアイデアが芽生える場へと育てようとしている金川代表。その背景には、現代の情報社会に対する彼独自の視点がある。

金川代表は手軽さと速さを追求する現代社会のコミュニケーションに一石を投じ、リアルな場での交流の価値を強調する。人々が直接顔を合わせ、会話を交わす中でこそ、真の信頼関係が築かれ、斬新なアイデアやプロジェクトが生まれると考えている。さらに、サラオンカルモは単なるコミュニケーションの場ではない。その場に集うのは、趣味を共有する個人や、事業の可能性を探る企業家たち。金川代表は、それぞれが「対話」を通じて相乗効果を発揮し、ビジネスや地域の発展に繋がるような新しいネットワークを形成することを目指している。

金川代表は説く。「今の時代、SNSを通じた情報交換は非常に便利です。しかし、それだけでは本当に意味のある繋がりや、深い議論は生まれません。人が集まり、共に考えることで未来は動き出す。それがリアルな場が持つ力です。顔を合わせて話すからこそ、お互いの意図や想いを正確に理解できる。その瞬間、そこには単なる場所を超えた価値が生まれるのです。」

 

「それは失敗ではなく成功への一歩である」

最後に、未来を担う若い世代に向けて金川正典氏はこう語った。「迷ったら挑戦してください。失敗しても構いません。それは成功への一歩に過ぎません。他人ではなく、昨日の自分を超える努力を続けてください。」この言葉には、金川代表自身が歩んできた波乱に富む人生と、その中で培われた経験が色濃く反映されている。若き日に直面した挫折や、挑戦による苦労、それを乗り越えて得た成功…これらは、ただの理想論ではなく、実践に基づいた確かな信念だ。

インタビュー風景

さらに彼は、挑戦することの本質をこう補足する。「成功だけを目指すのではなく、失敗から学び、それを糧にして次のステップを進むことが大切です。そして、その過程での学びが、未来の自分を形作る最大の財産になります。」

金川代表が描くのは他人との競争ではなく、自分自身との戦いだ。成長を阻む最大の壁は外部ではなく内面にあるという考えから「まずは昨日の自分を超えよう」と説く。その姿勢は、結果だけでなくプロセスそのものに価値を見出すことの重要性を教えてくれる。栃木という地域に根ざしながら、挑戦を続ける金川代表。その情熱と行動力は、地域社会の発展に向けた大きな原動力であり、多くの人々にとって未来を照らす希望の灯火となり続けるに違いない。