Future Leaders
1986年、栃木県生まれ。2006年 栃木美容専門学校を卒業後、恵比寿のサロンに入社。表参道有名店を経て、2011年に宇都宮に戻り、地元サロンに入社。2016年に独立し、2021年に株式会社PLUSを設立。コンテスト優勝等、多数受賞歴あり。
「株式会社PLUS」は、宇都宮市に店舗を構える美容室「cocon+&MONA+」を中心に、栃木、東京に合計5店舗の経営をしている。オーナーである吉澤代表は、恵比寿・表参道の有名サロン出身の、コンテスト優勝や多数の受賞歴がある実力派スタイリストだ。
オーナーになった今でも、技術力向上の情熱は絶やさない。「過信は絶対にしたくない。技術者として長く続けていると、もうこれ以上はいいかな…と、どうしても過信してしまう部分があります。だから、今でも練習はずっと続けるし、自分の実力を試せる環境には飛び込みたいと思っています。」と話す。最近はメイク学校も卒業し、JHA(日本ヘアメイクコンテスト)での優勝を目指して、毎年参加を続けている。
「私にとって美容師は天職だと思っています。お客様が喜んでくださる姿や、作品撮りで自分が納得のいく仕上がりにできたとき、この仕事が生き甲斐だと実感します。特に、作品撮りでは髪の毛が落ちる位置や、衣装とのインスピレーションの調和などを突き詰めていく中で、本当に自分が満足できる作品を作るのは簡単ではありません。だからこそ、自分の成長を止めてはいけないと心がけています。」
上京して都内の有名サロンを経験した後、再度地元に戻ることを決めたのは、美容師を始めたときから「起業」を考えていたからだ。「このままだと自分の描いていた人生設計から遅れを取ってしまうと気づきました。それが現実になってしまうのが非常に怖かった。だから地元に戻る決断自体は早かったと思います。起業したときはついに夢が叶ったと思いましたし、同時にこれからたくさんの人たちを幸せにしようと決意しました。」と吉澤代表は当時のことを振り返る。
独立して最初に出てきた悩みのひとつは資金繰りであった。当時、周囲の様々な人の意見や経験を聞いたという。「やはりサロン内の環境や提供するサービスが重要視されるので、融資を受けた資金を全て初期投資につぎ込んで、サービスの質をとことん上げるという考え方もありました。検討を重ねた結果、全てを初期投資に回さず運営費として多少の資金を残すという判断をおこないました。大きな資金をかけられず、当初オシャレなサロンとは言えなかったかもしれませんが、結果的にその資金繰りがポイントとなって、今もこのようにサロンとしてうまくやってこれているのだと思います。」
2019年におこなわれたコンテスト「DESIGNERS SOUL」での優勝をきっかけに、法人としての知名度が向上し、外部講師依頼も増加。現在、サロンワークに加えて外部講師や地域イベントの出席、雑誌掲載など多岐にわたる活動に力を注いでいる。しかし、都心部にはやはり比較的優秀な技術者が多く、他とは異なる取り組みを行わなければならないという思いがあると語る。
「現在進めているのは、SNSを通じて自分の技術を世界に発信することです。その第1弾として、3月にホノルルで開催されるお祭りに、着物屋「きものHAUS」のオーナー荻原貴則氏と共に参加する予定です。私はヘアメイクを担当し、この活動の様子をInstagramやYouTubeで発信していきたいと考えています。」
全国の移住希望地ランキングで上位をキープする栃木県。更なる地域発展のために「移住者だけでなくて、例えばファッションや飲食店などのビジネスでも進出したいと思えるような町作りをしていかなければならないと思う」と語る吉澤代表。特にワクワクしながら語ったのは「宇都宮ガールズコレクション」だ。地元である栃木から積極的に新しい取り組みを発信し、地域の魅力をさらに高めることで、都市発展へ貢献していきたいと吉澤代表は意気込む。
美容業界も、昔と比べて労働環境が大きく変化したと吉澤代表は言う。完全週休二日制や、社会保険完備など、多くのサロンが一般企業と同じような体制を整えている。それでもなお『美容師は大変だ』と感じる人がいるのも事実である。
「美容師という仕事は本当に楽しい職業だと思っているので、ちょっとしたことで落ち込まず、ぜひ頑張り続けてほしいと思います。そのためには、美容業界に入る際には何かしらの目標を持つことが大切です。『独立したい』『SNSで有名になりたい』など、何でも良いので目標をひとつ決めてほしいんです。ただ『なんとなく』で業界に入るのではなく、自分なりの目標を設定してほしい。それが、業界に入ってからの活力になると思います。」
そんな吉澤代表自身にも、長年抱き続ける大きな目標がある。それは「海外進出」。この夢を描き始めたのは19歳の頃からで、SNSでの発信もその夢へのひとつの足がかりだ。最近ではアジア圏内へ海外進出する美容師が増えているが、吉澤代表が目指しているのは欧米である。
「職人としてもそうですが、店舗展開ではなくヘアメイクの挑戦に焦点を当てています。アジア圏ではなく、技術が発祥したイギリスやファッションの中心であるアメリカやパリなどで挑戦したいという考えがあり、金銭面よりも自分の技術を認めてもらえる場所で活動したいというのが前提です。」
止まらない行動力があり、経営者であると同時に技術者としての顔も持ち続ける吉澤代表。その情熱ある技術が世界でどのように評価されるか、飛躍の日が待ち遠しい。