Future Leaders
1970年創業の家業で育ち、都内の大学で造園を学んだ後、栃木県下野市に戻り2代目として跡を継ぐ。「共生し幸を呼ぶ空間づくり」を理念に掲げ、現代の暮らしに寄り添う新しい庭づくりで地域社会に貢献し続けている。
栃木県下野市。豊かな自然と田園風景が広がるこの地で、1971年に父が創業した「倉井造園」から緑南造園株式会社の歴史は始まった。平成元年に法人化を果たし、半世紀以上にわたり公共事業から一般住宅の造園・土木施工に至るまで街の緑を支え続けている。
その現場を幼少期から身近に見ながら育ったのが、2代目代表取締役の倉井一樹氏だ。物心ついた頃から職人たちが木々を手入れする姿や重機が動き空間が組み上がっていく様を目にしてきた倉井氏にとって庭づくりは生活の一部であり、憧れの対象でもあった。
造園の奥深さを体系的に学ぶため都内の大学へと進学した倉井氏は、最先端の景観デザインや緑化技術、環境理論を習得。卒業後は地元・栃木へと戻り、迷うことなく家業の門をたたいた。しかし、現場に入って直面したのは高度な技術を持つ職人たちとの壁や、時代の変化に伴う「庭に求められる役割」の変容だった。
先代たちが築き上げてきた歴史と信頼を守りつつ、ただ同じことを繰り返すだけでは生き残れない。現代の住環境やライフスタイルに合わせた「新しい価値」を提示しなければならない。葛藤の中で倉井氏は、自らの手で会社を次なるステージへと引き上げる覚めた。
「庭は単に木を植えて人工的に整えるための場所ではありません。そこに住むご家族が日々、自然の息遣いや季節の移ろいを感じ、心がほどけるような空間であるべきです」
そう語る倉井氏が現代の住まいへ提案しているのが、里山の原風景をそのまま切り取ってきたかのような「雑木の庭」だ。かつての格式高い庭園のように過度に刈り込んでつくり込むのではなく、アオダモやモミジ、ヤマボウシ、コナラといった自然樹形の美しい雑木を主役に据え、柔らかな木漏れ日や心地よい風のそよぎを日常に取り入れるスタイルである。雑木の庭づくりにおいて最も重要なのは、それぞれの木が自然の中でどのように育ち、風や光を求めて枝を伸ばすのかという「生態の理解」だ。一本一本異なる幹の曲がりや枝ぶりを見極め、あたかも最初からそこにあったかのように自然に配植していく作業には、長年培われた職人の観察眼と感性が不可欠となる。一級造園施工管理技士・一級土木施工管理技士としての「確かな基盤づくりの技術」があるからこそ、樹木が無理なく健やかに育つ土壌環境を整え、自然体の美しさを長く維持することができる。春の新緑、夏の木陰、秋の紅葉、そして冬の端正な枝ぶり――四季折々の豊かな表情を住まいにもたらす緑南造園の「雑木の庭」は、忙しい現代人の暮らしに寄り添う新たな庭のスタンダードとして、多くの施主から確かな支持を集めている。

緑南造園の強みは、設計や施工だけに留まらない。下野市の広大な敷地に自社農園を所有し、生産から卸売、植栽、アフターメンテナンスまでを自社で一貫して手掛けられる点にある。長年培ってきた技術で一木一刻と向き合い丹精込めて育てられた自社農園の樹木は、同社の品質の高さそのものを象徴している。卸売り業者としても信頼を得ているからこそ、お客様の多様なご要望に対して、状態の良い樹木を最適な価格で提案することが可能となっている。また、同社は個人の庭づくりにとどまらず、公共の道路緑化や公園の整備・管理、企業の緑地メンテナンス、さらには外構エクステリア工事まで幅広く事業を展開する。
「造園工事は、完成した瞬間がスタートです。生き物である木々は、年月日を経て成長し、変化していきます。だからこそ、剪定や伐採、消毒といった適切な管理を通じて、何年、何十年先も美しい状態を保ち続けるための『伴走者』でありたいと考えています」
地域社会に根差し、街全体の景観と環境を守り続ける姿勢が、緑南造園の揺るぎないブランドを形作っている。

デジタル化が進み、効率やスピードが重視される現代においても、倉井氏は「人の手で創り出す質感と、自然と向き合う情熱」だけは決して効率化できない領域だと信じている。
「ものづくりに本当の『失敗』はありません。うまくいかなかった経験もすべて次の糧になり、より良い作品を創るためのデータになります。一番の失敗は失敗を恐れてチャレンジしないことです」
その強い信念のもと倉井氏は若手職人の育成や働きやすい環境づくりにも全力を注ぐ。昔ながらの「背中を見て覚えろ」という職人世界から脱却し、技術をロジカルに体系化して伝えることで、若い世代が誇りを持って成長できる組織を構築している。
「若い職人たちには、自分にしか生み出せない空間を創り出す面白さを知ってほしい。造園は人の心と暮らしを豊かにできる本当に素晴らしい仕事です。自分が手がけた庭が、街の景色となり、人の幸せな時間を支えていく。その喜びを次の世代へとしっかりと繋いでいきます」
先代から受け継いだ技術を磨き上げ、雑木を使った庭という新しい価値を吹き込み、地域に幸福をもたらす庭を創り続ける倉井一樹氏。時代が変わろうとも、自然と真摯に向き合うその探求心はこれからも人々の暮らしと街の未来を緑豊かに照らし続けていく。
