Future Leaders
作新学院高校で2000年春のセンバツ高校野球に出場。東北福祉大学卒業後、アロマ関連商品の小売事業で起業。その後、福祉の道へ転身し、2019年に株式会社ジェイアンドエルを設立。障がい者の就労支援を中核とし、清掃事業を通じて持続可能な事業モデルの全国展開を目指す。

宇都宮市に拠点を置く株式会社ジェイアンドエルは、障がい者就労支援を軸に、グループホーム、相談支援、清掃事業、農業事業を有機的に連携させた福祉企業だ。単なる福祉サービスではない。「働くこと」を通じて障がいを持つ方々に役割と収入をもたらし、安心して暮らせる環境を創造する。その循環こそが、誰もが共に生きる「共生社会」の礎となる。
2019年、長代表が会社を立ち上げた背景には、障がい者支援の現場を見学する中で感じた「違和感」があった。制度に依存し、当事者の本当のニーズに向き合えていない現場。20代半ばでアロマ関連の小売事業を起業した長代表にとって、福祉の世界は未知の領域だった。しかしそこで彼は確信した。「自分なら、光を当てられる」と。

長代表のルーツは、高校野球にある。2000年、作新学院高校で春のセンバツに出場した経験が、今の経営哲学を形作っている。
「野球を通じて学んだのは、『地道な積み重ねだけが不安を自信に変える』ということ。派手なことじゃなくて、当たり前のことを徹底的にやり抜く。それが凡事徹底です」
その精神は、長代表の起業ストーリーにも色濃く反映されている。大学卒業後、元気寿司に就職したものの1年で退職。その後、商工会議所の「チャレンジショップ」制度を活用してアロマ関連商品の小売からスタートし、やがてリラクゼーションサロンへ。その時に「近くの店舗が撤退するから1ヶ月半くらいしか時間ないけどなんかできる?」と言われて、「やります」と即答したという。
「ともかくやってみろ、というのが一番かなと思って。僕がそれだったんで」
しかし4年前、長代表は壮絶な経験をした。年間の発症数が200万人に1人とも言われている稀な病気である脊索腫を患っていることが発覚したのだ。
「その時は従業員が回してくれました。マネージャーを中心に『社長がいないからみんなでやろう』と助けてくれた。維持するのも大変だったと思いますけど、それがあったおかげで安心して家族も暮らせた。」
もともと関連事業ではあるが別の会社を立ち上げようと印鑑まで作っていた。しかし闘病を経て、長代表の考えは変わった。「自分の体力も踏まえて、この会社をどうより良くするか、改めて考えたんです。新しいことを始めるより、今ある事業を磨き込もうと。目的は同じだが進め方を変えました」
従業員の存在が、「今だからこそできることを成し遂げたい」という強い覚悟に繋がった。この経験が、現在の事業展開の強固な礎となっている。

長代表が今、最も力を入れているのが清掃事業だ。
「清掃という業種は働き手が不足している。だからこそ、専門性を身につけやすく、障がい者の自立に直結する清掃を選びました。就労支援で育った人たちが、そのまま活躍できる場になるんです」
さらに長代表が目指すのは、人手不足と雇用創出、賃金底上げを同時に実現することだ。
「当社はソーシャルカンパニーとして清掃の仕事を受注し、雇用の創出と、一部を就労支援事業所に仕事をだすことで賃金の底上げをする。事業所が稼げるように技術の提供も行っていく。ただ、受注したすべての仕事が障がい者や事業所と結びつくわけではありません。自社でも就労支援を行っているので業務の切出しやノウハウがあるのが他社(清掃業)との違いになります。通常の清掃会社に上記のような機能を持っていることで、人手不足の解消と雇用の創出、そして賃金の底上げを実現していきます。」
そして長代表が大切にしているのが「シナジー」だ。清掃だけではない。レーザー加工のハンドメイド、さつまいもの加工品など、多様な事業を組み合わせている。
また、栃木という地元への想いも強い。「事業は継続してこそ意味があると考えたとき、地元の縁や野球で培った人脈に支えられたことは大きなアドバンテージでした。天災が少なく、住みよい栃木の地で、更なる挑戦を続けています」

長代表が描く未来は、二つの軸で語られる。一つは「清掃事業モデルの全国展開」、もう一つは「地域から選ばれる事業所」だ。「清掃の仕事をたくさん受注することで、必要性があればもう一事業所、就労支援事業所ができるかもしれない。仕事を出す側でもいい。モデルができれば、清掃業の人材不足と障害者の一般就労、この2つの課題が解決できるんじゃないかと。その流れは作りたいですね」
まずは栃木、そして茨城や群馬など近隣エリアへ。生え抜きの人材も採用して、清掃事業を伸ばしながら拠点を拡大していく構想だ。
「『就労支援』というキーワードがあって、そこをいかに倒れなくするか、いかに強く出来るか」というイメージでやっています。障がいを持つ方々が、『働くこと』を通じて役割を持ち、安心して暮らせる。そんな環境を、もっと広げていきたいですね。そして、利用者さんやスタッフが、振り返った時に『ここで良かった』と思える場所を作りたい。その中でみんなが誇りを持って働けたら、最高じゃないですか」
ジェイアンドエルが歩み始めた道は、誰もが光を受け取れる、新しい共生社会の物語だ。「働くこと」を軸に、障がい者の自立と地域社会の持続可能性を両立させるこの会社の挑戦は、栃木の未来、そして日本の福祉業界の未来を明るく照らしている。