Future Leaders
栃木県出身。大学では教職を志すも、21歳の時に父から家業承継の打診を受け、進路を大きく転換。入社後は「現場を知らずして経営はできない」という信念のもと、約8年間製造現場に身を置き、その後、事務・営業部門も経験する。ものづくりの最前線から経営全体を俯瞰する視座を培い、創業家三代目として3年前に代表取締役に就任。先代の築いた基盤を守りながら、組織化と事業拡張を進める第二創業期を率いている。
住宅が完成した後、住む人の目に触れることはない。それでも確実に暮らしを支え続ける、そんな「見えない部材」を加工する企業が栃木にある。タキノ加工材株式会社だ。外壁の内側に使われる下地材や、ドアの枠、装飾部品。派手さはないが、品質を欠けば住まいの安全性そのものを揺るがす重要な存在である。
三代目社長の滝義博は、この“目立たない仕事”にこそ誇りを見出してきた。品質管理の国際規格ISO9001を取得し、工程や判断を「見える化」することで、感覚や勘に頼らないものづくりへと舵を切る。誠実さを仕組みとして積み上げる姿勢は、地域の住宅産業において静かな信頼を集めている。滝が向き合っているのは、単なる加工業の存続ではない。人手不足が深刻化する建設業界において、いかに地域の住まいづくりを支え続けるか。その問いに、日々挑み続けている。

「正直、不安の方が大きかったですね」代表就任を振り返り、滝はそう語る。だが、その覚悟はずっと以前から始まっていた。大学3年生の時、父から一本の電話が入る。「継いでくれないか」。教壇に立つ未来を思い描いていた青年は、迷いながらも決断する。幼い頃から休みなく働く父の背中と、そこで働く社員の存在が、心を動かしたのだ。
入社後の8年間、滝は製造現場に立ち続けた。失敗も多かった。若さで何とかなる…そんな自信はすぐに打ち砕かれたという。それでも現場で汗を流し続けた経験が、今の経営判断の軸になっている。「一人では何もできないと、現場で思い知らされたんです」その実感が、トップダウンではなく、社員一人ひとりの声を尊重する経営スタイルへとつながっていった。

現在売上が約13億円を誇るタキノ加工材。しかし滝はその数字を、通過点にすぎないと捉えている。目指すのは、加工から塗装、出荷までを一貫して担うワンストップ体制だ。顧客が抱える在庫過多や工程の煩雑さを、自社が引き受ける。「材料だけ供給してもらえれば、あとは全部やります」と胸を張って言える存在になることが、最大の価値だ、と。
そして、現場では多国籍な人材が活躍している。インドネシア、ブラジル、フィリピン。文化や宗教の違いを尊重し、祈りの場を設けるなど、働く環境づくりにも心を配る。「彼らは労働力ではなく、仲間なんです」多様性を力に変える組織づくりも、滝が描く革新の一部なのだ。

需要は確実に増えている。だからこそ、滝は自問するという。キャパシティ不足を理由に成長を止めてよいのか、と。土地、設備、そして人材。課題は多い。それでも「どこまで食らいつけるかの勝負」だと、前を向く。
「仕事は長い時間をかけて向き合うものだと感じています。だからこそ、「何のためにやるのか」を考え続けてほしい、と思っています。本気で取り組んで、本気で考えたその先に、必ず面白さがあるんです。どんな仕事にも、必ずあるはず。自分自身で、ぜひ見つけてほしいですね」
見えない部材に誠実さを込め、地域の暮らしを支える。その積み重ねが、栃木の未来を形づくる。滝義博の挑戦は、今日も工場の現場から続いている。
